4歳児、絵本をつくる

クリマガ

自作絵本

 新型コロナウイルスの自粛時間を使って、4歳になる友人の子どもと一緒にオリジナル絵本をつくった。私はこの経験を通して、子どもの発想力と表現力のすごさを目の当たりにした。

4歳児 オリジナル絵本

絵本づくりをしようと思ったワケ

 そもそもなぜ絵本作家でもない私が、子どもと一緒に絵本をつくろうと思ったのか。その理由は、学校や幼稚園、保育園が休みになったことで、子どもたちの学びや遊びの機会が激減してしまったのをなんとかできないかと考えたところにある。また子どもが何かに熱中している間だけでも、親がホッとできる時間をつくれないかという想いもあった。あと、子育てで忙しい友人と喋るきっかけが欲しかったという本音もちょこっとある。だから試しに、子どもが何かを生み出すお手伝いができないだろうかと思ったのだ。

 とはいえこの時点で私のこの考えは、単なるひとりよがりでしかない。だからとにかく自分に言い聞かせたのは「子どもがやりたいと思わない限りやらない」ということだった。

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 早速友人に絵本つくりのことを打診してみたところ、「面白そう!」と返事が返ってきた。ただしこの段階では、大人同士が盛り上がっているだけである。肝心の子どもの意思はここにはないので、後日友人からその子に「自分で絵本をつくってみないか」と聞いてもらった。返事は、ノリノリ、とのことだった。

すでに3つのストーリーができていた初回打ち合わせ

 直接会うのが難しいこのご時世。絵本づくりの打ち合わせは、オンライン会議ツールでおこなった。

 友人の子ども(以下 Aちゃん)とは、「クリス」と呼び捨てされるほど仲を深めていた私(舐められていただけの可能性もあり)。ところがやはり久しぶりの対面。しかもオンライン。最初は普通に会話するだけでも難しかった。(割とすぐに鼻をほじり合ったり、変顔対決をしたりしていたのだが……)

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▲個人の特定を防ぐため、また私もどスッピンで引くほど顔色が悪いため強めにぼかしを入れた

 また相手は4歳。ある程度おしゃべりはできるものの、普段子どもと喋り慣れていない私+オンラインの音声環境という悪条件もあったので、やはり親である友人に同席してもらい、時に通訳をしてもらった。

 今回の絵本つくりは、子どもの「やりたい」気持ちを何よりも大切にしている。そのため、できる限りAちゃんのアイデアを反映したいと思っていた。しかし相手は4歳。何ができるのか、未知数だった。

 その私の不安を吹き飛ばしてくれたのが、Aちゃん自身だった。なんと初回の打ち合わせに、3つもの絵本のストーリーを持ってきてくれたのだ。しかもそのアイデアはどれも面白く、ぜひ手元にその絵本を置いておきたいと思う内容ばかりだった。

 とはいえ今回は、Aちゃんとっても私にとっても初めての挑戦。いきなりすべてをつくるのはきっと難しいだろうと思い、まずはそのアイデアの中から1つ、とっておきのお話を絵本にすることに決めた。

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 『○○くんが おとした なのはな』
 (※○○くんは、Aちゃんの弟)

 Aちゃんは、幼稚園で摘んだ菜の花をお母さんにプレゼントするため持ち帰る。いざお母さんに渡そうとした時、弟が菜の花を取ってしまい、しかも近くの川に落としてしまう。Aちゃんは悲しみに暮れる。しかし川を流れていた菜の花が鳥になって、Aちゃんとお母さん、弟のもとに飛んで帰ってくる、というのが話の概要だ。

 すごい。すごすぎる。

 これだけのストーリーが、大人の力を借りずにAちゃんの頭の中で完成していたのだ。この時点で私は、Aちゃんの発想力に脱帽していた。

親は写真を撮って送るだけ、のつもりだった

 ストーリーを聞いた後は、実際に絵本にするために必要な絵の話し合いへ。ただこれはAちゃんだけで考えるのが難しそうだったので、ストーリーの起承転結を一緒に考え、計5シーンの絵を用意してもらうことになった。そして私は、Aちゃんが考えたストーリーを文章に落とし込み、かつAちゃんの絵をデータにして入稿する担当を請け負った。

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▲友人にざっくりと今回の取り組みを説明するときに使った図解。雑過ぎる

 絵本は家で手作りもできる。しかし今回あえてデータ化し、印刷所にお願いすることにした。その理由は、親への負担を減らしたかったからだ。

 手作りでするとなると、親が絵本づくりに時間を割かなければならなくなる。これでは今回の取り組みの目的である「親がホッとできる時間をつくる」が達成できないと考えた。かといって、私が直接Aちゃんと絵本をつくれる状況ではない。だったらAちゃんが描いた絵を友人に撮影してもらいLINEで送ってもらって、それを私がフォトショでテキストと一緒にデータ化しそのまま印刷してもらうほうが、親も気軽に取り組めるのではないかと考えたのだ。

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 しかしこの考えは甘かったと反省した。4歳のAちゃんはまだ親が描くものを用意し、親の目の届くところでしか絵が描けない。私としては「親は写真を撮って送るだけ」くらいを想定していたが、結局友人は子どもが絵を描いている時間も目を離せないため、その時間が親にとってホッとする時間になるかと問われれば、そうとは言い切れないと感じた。

 また私の作業も、一部てこずった。というのも、送られてくる絵は写真で撮ったもの。そのため影が入っていたり光が強く反射していたりして、Aちゃんの絵の色味を完璧に読み取れなかった。なにより子どもの筆圧だ。薄くて、読み取りが難しい部分もあった。もちろんスキャンをお願いすれば少しは違ったのかもしれない。しかしいちいち機械を起動して読み取って送ることも手間だろうと思いスマホの手軽さを重視した結果、自分がちょっと苦戦することとなった。

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 とはいえAちゃんが自由に描く素敵な絵は、私の作業の時間をとても楽しいものにしてくれた。なかでも驚いたのは、色づかい。私だったら青色一択の川に、赤や黄色が使われていたのだ。これまでの人生で「川は青」というフィルターがかかっていたのだと、Aちゃんの自由な色彩を通して気づかされた。

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 またLINEで進行中の絵本データをこまめに送り、「ここの色味をもっと濃く」「この絵の位置を変更して」といった修正のやりとりもした。こういうやりとりを複数回くりかえしながら、絵本の入稿データが完成。私も1冊、いちファンとして購入させてもらって、宝物として大事にしている。

難しくて楽しい「子どもの可能性を信じる」ということ

 今回、子どもの創作のサポート役をしてみて感じたのは、大人が思っている以上に子どもは自分でいろいろ考えて形にする力を持っているのではないか、ということだ。

 今回は単に4歳児にとって身近だろうという安直な考えで「絵本をつくってみない?」と私から話を持ちかけたが、もしかしたら子どもは「何が好き?」の問いから「やってみたい」「形にしたい」ことを、大人が導かずとも見つけ出せるのではないかと感じた。私の子どもの可能性を信じる力はまだまだだ、とも。

 ただし子どもが自分のやりたいことを見つけたり形にしたりするのには、少々時間がかかるだろう。子どもの「やりたい」を叶えてあげたくても、なかなかそんな余裕はないという親御さんもいるのではないだろうか。

 そんな親子の間に「一緒にやろうよ」と今回の私のような第三者が入ることで、子どもの「やりたい」がほんの少し形になるかもしれない――。この考えに関しては完全にひとりよがりだが、私は今回の絵本づくりを通して、そんな希望を持った。

 またこの取り組みが、普段は「育児で大変かもな」とちょっと遠慮してしまっていた友人との連絡のきっかけにもなった。絵本づくりだけでなく不安を吐き出し合う場ができたことで、友人と子どものためという名目で始めた取り組みに私が救われていたのだ。友人もそう思ってくれていたらうれしいなとは思うが、これはなんだか恥ずかしくて聞けないけれども……。

 もし次の機会があるならば、もっともっと子どものできることを引き出しつつ、親御さんの手間を軽くする方法を考えたい。

 

クリスアイコン

この記事を友人に読んでもらったら、親も楽しめたと言ってもらえて少しホッとした。子どもと1つの目標に向かって話し合う時間がつくれたことは、とてもいい経験になったとも言ってもらえた。またAちゃんも、もう一冊作ってみたいと言ってくれているようだ。ちょっとくらいうぬぼれてもいいのかもしれない……。

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